アドラー心理学『嫌われる勇気』要約|ニューノーマル時代の他者との関わり方のヒントがある(名著まとめ)

アドラー心理学『嫌われる勇気』要約|ニューノーマル時代の他者との関わり方のヒントがある(名著まとめ)
2022年3月29日

近年における急激な社会変革によって、社会にはニューノーマル(新しい常態)が生じているといわれています。

ニューノーマル時代では働き方について大きな考え方の変化が求められます。それによって、これまでの世界とは違った悩みに直面している人が多くいるのではないでしょうか。

そこでニューノーマルな時代の悩みを解決する指針となるかもしれない一冊が「嫌われる勇気」です。どのような本なのか見ていきましょう。

「嫌われる勇気」とは

「嫌われる勇気」は2013年に発売されて以来、高い人気を誇る書籍です。2015年に日本のビジネス書ランキングで年間1位の売り上げを記録しました。

同年、韓国においても年間ベストセラーで1位となっています。内容を一言で説明するなら「アドラー心理学」の解説本といえるでしょう。アドラー心理学とはアルフレッド・アドラーとその後進が作り上げた、心理学の体系です。

創始者のアルフレッド・アドラーは1870年生まれのオーストリア出身の男性です。同時代を生きたジークムント・フロイトやカール・グスタフ・ユングと並び称される、心理学・精神医学の大家として知られています。

「嫌われる勇気」の要約

「嫌われる勇気」は平易にアドラー心理学が理解できるように構成されています。そのテーマは「どうすれば人は幸せに生きられるか」という哲学的な問いです。

「嫌われる勇気」ではその答えが、哲学者と青年の対話形式によって、きわめて簡単かつ具体的に提示されています。「人は今日からでも幸せになれる」と哲学者は青年に言います。しかし、青年はその言葉の意味を理解できません。哲学者はどのようにして青年を導くのでしょうか。

それでは「嫌われる勇気」の要約をみていきましょう。

第一夜 トラウマを否定せよ

この章では、「これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについては何の影響もない」と記されています。これは、アドラー心理学における「目的論」の考え方です。

哲学者は、人は誰しもが幸せになれると語ります。そうなれないのは「幸せになる勇気」を人が持とうとしないからです。なぜ人は幸せになる勇気を持とうとしないのでしょうか。その答えとして「変化する勇気」を持とうとしないからだと、哲学者は示します。変化する勇気が持てないのは、過去の失敗体験やトラウマを現在状況の理由にしているからです。

現状から変われずにいるのは、自分で変化しないことを決めているからだと、さらに哲学者は言います。そして、過去の原因を気にするのではなく、目的に目を向け、変化する勇気を持つことが、幸せへの近道であると説きます。

第二夜 すべての悩みは対人関係

第二夜では、自己評価が低くなる原因を説き、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩み」であるとここでは記されています。

第一夜で示された考えによれば、自分のことが嫌いな人は、自分で自分を嫌いでいることを決心していることになります。その目的は、あらかじめ他人から嫌われていれば、あらためて嫌われたとしても対人関係で傷つくことがないからです。

この章で哲学者は、誰もが劣等感を持っており「すべての悩みは対人関係から発生している」と言います。しかし、お金や病気などの悩みは対人関係とは違うことでないかと、青年は強く反論しました。

ですが、対人関係になさそうな問題であっても、実際は人との関係性に影響を受けています。そして、その捉えられ方は変化します。金銭問題であれば、他人と収入や貯蓄を比較することで、劣等感や優越感を得ることになるでしょう。

また、これによって競争意識を生みだし、新たな悩みの原因となります。このような悩みの渦から抜け出すには、正しい競争相手を見つけることが大切です。正しい競争相手は理想とする自分であって他者ではありません。

他者が競争相手ではなく味方であることを認識できれば、対人関係の悩みから自由になれます。

第三夜 他者の課題を切り捨てる

実際に対人関係のトラブルに遭遇した場合はどうすればよいのでしょうか。ここで哲学者は「誰の課題であるか」を考えることが大切だと説いています。

私たちは、誰かに認めてもらわずとも生きていけます。他人も私たちと同じです。私たちを含む誰かに認めてもらわずとも生きていけます。また、私たちは他者の欲求を満たすために生きているわけではありません。ましてや、私たちは他者の人生を生きていません。あくまで自分のために自分の人生を生きているのです。

そのため、他者が抱える課題へ介入することは認められません。例えば、子どもに勉強をしなさいというのは、子どもの課題への介入といえます。勉強しないことでの結果は、子どもが担うべき課題です。協力や援助はできても、課題を最終的に解決するのは子どもでしかありません。

このように、自己の課題と他者の課題を分離させることを「課題の分離」と呼び、他人の課題に介入しないことが「他者の課題を切り捨てる」ということです。

もし、課題を分離せずに介入してしまうと、相手の気持ちを考えて行動することになります。それが破綻してしまうと、自分の気持ちに嘘を付きながら生活することになります。これでは本当の幸せを得ることはできません。

幸せに生きるには、他者からの評価を気にせず、自分の生き方を貫くことが大切なのです。それには他人からの承認欲求を持たずに「嫌われる勇気」を備えることが必要です。

課題の分離は良い対人関係を築くためのスタート地点であるといえるでしょう。

第四夜 世界の中心はどこにあるか

「課題の分離」が対人関係のスタート地点だとすれば、ゴール地点は何なのでしょうか。この章において哲学者は、対人関係のゴールとして「共同体感覚」について語ります。

「課題の分離」では他者を自己と分けて考えるべきとしましたが、ここでは他者を仲間として認識します。「自分の居場所がある」と感じられるようにすることが、幸せにつながるからです。

ここで言う貢献は、大きな成果あるいは仕事などを指していません。貢献にとって大切な要素は「自分は役に立っている」という実感です。他者からほめられたり、感謝されるようなことは必要ありません。

自分が共同体に積極的にかかわりを持ち、そこで貢献ができているかを考えることで、より強い所属感が得られるようになります。しかし、その関係づくりには注意が必要です。共同体での人間関係が「縦の関係」では、幸せを感じることが難しいからです。

縦の関係は、劣等感や上限関係を生み出す原因となります。よい共同体を生み出すためには、他者と対等である「横の関係」を意識する必要があります。なお、横の関係では、共同体のメンバーに感謝を告げることや勇気づけることはあっても、褒めたり叱るようなことは認められません。

褒める言葉や叱る言葉は、共同体の人員に上下関係を作ってしまうからです。

第五夜 「いま、ここに」を真剣に生きる

第五夜において、青年はこれまでの哲学者とのやり取りを思い返し、人生の意味を考えます。しかし、哲学者から返ってきた言葉は「一般的な人生の意味はない」というものでした。

一聴しただけでは、人生の無意味さを説いただけに感じるかもしれません。ですがこの言葉の真意は、人生に意味を与えるのは自分でしかないということです。

アドラー心理学において、幸せな人生を送るためには、次の3つの要素が必要であるとされています。

1つ目はありのままの自分を受け入れる「自己受容」、2つ目が疑いを持たない「他者信頼」、3つ目は「他者貢献」です。人生それ自体に意味がなくとも、これらの要素を押さえておけば、自分で自身の人生に意味を与えられるようになります。

仮に他者から嫌われることがあろうとも、それは自分が介する課題ではありません。他者を信頼して貢献することを道しるべとし、共同体意識を持つことができたなら、それは対人関係のゴールです。

対人関係が解決したなら、幸せな人生が送れるようになるでしょう。人生は自分でしか変えられません。しかしそれは、誰もがいまこの瞬間から、人生を変えることが可能であるということです。

なぜ「嫌われる勇気」が支持されたのか

「嫌われる勇気」が多くの人の支持を集めたことには理由があります。

それは、この本が人々の普遍的な悩みの解消に成功していることです。「幸せになりたい」という願いは、多くの人が常日頃から思っていることではないでしょうか。「嫌われる勇気」は、アドラー心理学の考え方からのアプローチによって、明快な答えを提示しました。

くわえて、答えの実践が決して難しくないことも人気を集めた理由といえます。心理学や哲学は難解な考え方が多いため仮に答えが示されたとしても、その理解や実践は簡単ではありませんでした。

「嫌われる勇気」は本を読むだけで理解がすすむように、対話形式で書かれています。使われている言葉に、難解なものはほとんどありません。考え方や答えには具体例が示されているのでとても理解がしやすくなっています。

また、「嫌われる勇気」では「人の悩みはすべて対人関係の悩み」であるとしています。現在のようなニューノーマルな時代では、その働き方において、従来とは大きな変化が見られるようになりました。テレワークやリモートワークといった働き方もその変化の1つといえるでしょう。

しかし、働き方の変化が進むほどに、対人関係やコミュニケーションの取り方に悩む人が増えるようになりました。そこで、対人関係やコミュニケーションの取り方の答えを求めて「嫌われる勇気」を求める人が増えたようです。

まとめ

ニューノーマルな時代の働き方には、共同体への参加やコミュニケーションの取り方に特有の難しさがあります。「嫌われる勇気」はそんな対人関係の悩みを解決する指針と成り得る本でしょう。

また「幸せになりたい」という人類の普遍の願いに対して、実践的な答えを提示している本でもあります。人は自分が望んだその瞬間から変わることができます。

もし、自分に変化を求めているのなら「嫌われる勇気」を手に取ってみてはいかがでしょうか。

波多楽くん
波多楽くん

対人関係に悩みを持つ人は多いでしょう。「嫌われる勇気」には対人関係の悩みを解決するヒントがつまっています!