日本でSDGs(エス・ディー・ジーズ)が認識されるきっかけになったのは、ファストフード店でプラスチック製のストローが配布されなくなったことでした。
海洋汚染をなくすためにプラスチックごみを減らすことが目的ですが、これだけがSDGsではありません。SDGsは働き方とも関係しています。
「SDGs」という言葉は知っているけど、具体的に何のことだかよくわからないという方は、この記事でざっくり把握してください。
SDGsとは
SDGsとはSustainable Development Goalsの頭文字をとった省略形で、持続可能な開発目標という意味です。
SDGsは2015年を達成期限として2000年に国連で掲げられた、開発途上国向けの開発分野における国際社会共通の目標であるMDGs(Millennium Development Goals)の8つの目標を引き継いでいます。
MDGsは一定の成果を上げましたが、乳幼児や妊婦の死亡率削減など未達成の課題も残りました。2015年の国連サミットでは開発途上国だけでなく先進国が取り組むべき、持続可能でよりよい世界を目指すための「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
『2030』は、2030年までに解決すべき目標であることを示しており、17個の目標があります。さらに目標を達成するために169個のターゲットが設定され、具体的な数値目標として232の指標があります。
SDGsを簡単にわかりやすくいうと、『人類の生き残り戦略』と言えるでしょう。
人類は、地球の資源を消費し続けて栄えてきました。しかしこのままでは、100年以内に世界経済は限界を迎えるといわれています。温暖化や異常気象の問題、人口爆発による食糧不足、開発によって自然が壊され生き物が住めないなど、現在の地球には多くの問題があります。
SDGsの17個の目標を達成することは、美しい地球で人類が豊かにずっと生き続けていける世の中を作ることに繋がります。個人の取り組みとして、ごみの分別、エコバッグやマイボトルの使用など、身近なことがSDGsの実現に近づきます。
私たちの“これからの働き方”と関係するもの
SDGsの17個の目標のうち、働き方と関係の深いものがあります。17個の目標は、それぞれが関係を持ちながら成り立っています。
『質の高い教育をみんなに』
SDGsではこの目標の達成のために、子供に限らず女性や障害者、開発途上国などの大人の教育についても様々なターゲットを定めています。
働き方と最も関係が深いのは「2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる」の部分です。
『ジェンダー平等を実現しよう』
「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」のテーマに、9個のターゲットから構成されています。ジェンダー差別なく社会参加できれば、貧困、教育、経済成長といったさまざまな課題を解決することができます。
特に日本では、科学分野において理系分野における女性活躍に大きな格差が生じています。出産・育児・介護等により研究活動の継続が困難になる、研究を離れることへの業績評価配慮が欠けていたなどにより、上位学位へ進む女性の割合が低下していると分析されています。
『働きがいも経済成長も』
この目標は働き方ともっとも関係の深い部分です。すべての人が持続的に完全雇用され働きがいのある人間らしい仕事をしながら、持続的な経済成長を図るという目標です。
特に「2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」は個人の働き方に直接関係します。
SDGsに関連した取り組み
所得の格差や長時間労働といった課題を抱える日本において、SDGsと関連して取り組むべきテーマがあります。
ディーセント・ワーク
SDGsでは働きがいのある人間らしい仕事をディーセント・ワークと呼んでいます。
ディーセント・ワーク (Decent Work)は”働きがいのある人間らしい仕事”と訳され、1999年に、国際労働機関(ILO)のファン・ソマビア元事務局長が提唱した考え方です。
労働時間や賃金、勤務内容などが人間としての尊厳を持って、健康を損なうことなく人間らしい生活を継続的かつ持続的に働けることです。
これらを保障するものとして団体交渉権や失業保険、最低賃金などが挙げられます。
日本の労働環境
男女の賃金格差や長時間労働、ハラスメントなどの問題の解消には時間が必要です。男女の労働条件に関しては賃金格差だけでなく昇格の格差や、女性は採用されにくいといったケースもあり生涯賃金に差が出る結果となっています。
また、働いているのに貧しくなるワーキング・プアなどの問題も残っています。ケガや病気で仕事ができない場合の賃金の保障も行われていないことが多く、医療費が生活を圧迫して貧困につながるようなケースもあります。
一方で、最近では正規社員と非正規社員の間の基本給や賞与などの待遇差が禁止され、同一労働同一賃金が実現されつつある状況にあります。
SDGsの目標達成によって個々の経済活動が充実すれば、それが国や世界全体の経済成長につながるはずです。
企業とSDGs
SDGsの取り組みは国やNGOだけでなく、企業が中心となって社会をよくしていこうという考え方に基づいています。SDGsは企業をパートナーとして本業にSDGsの考え方を取り入れ、収益を上げながら地球環境に貢献することを促します。
SDGsに取り組むことで企業の存在意義や資本主義のあり方などの根本的な議論が行われ、企業自身が利潤の追求だけでなくビジネスと社会の両立を考えるようになりました。
ESG(environment social governance)
ESG(environment social governance)は企業の社会貢献を環境問題、社会問題、企業統治への取り組みの観点から見る考え方です。
ESG投資は、投資家がESGを判断材料のひとつとして投資先を決める投資の手段です。近年はESG投資をする投資家も増えています。
SDGsとは異なりますが企業の社会貢献によって投資先を決めるというESG投資はSDGsと相性がよく、SDGsに取り組むことで企業は自社のブランドイメージを高めて投資家の支持を得て、資金を調達しやすくなります。
また、社会貢献に取り組む企業の商品やサービスを支持する消費者もいます。
このような市場の圧力と企業活動を通じたよりよい社会の実現という要請を背景として、企業がSDGsに向けたビジネスを構築することで資金を得やすくなり利益が上がるという好循環が生まれています。
SDGsをビジネスに取り入れた起業家
貧困解消を目的として小口融資をする会社や、ウガンダのシングルマザーが作ったバッグを売る会社があります。
障害者や引きこもりの人が働けるチョコレート工場を作り、障害者ショコラティエの育成や研修や運営のノウハウをフランチャイズ方式で広める活動をしている人もいます。
従業員を大切にする企業には競争力があるといわれています。従業員の満足度を上げる経営を目指すこともSDGsの取り組みです。企業がSDGsに取り組むことで、従業員の労働環境の改善にもつながります。
個人として企業に影響を与えるには、投資家としてSDGsに取り組む企業に投資したり、株主総会に出席してSDGsへの取り組みをチェックするなどの方法もあります。
消費者として、SDGsに取り組む企業の商品やサービスを買うことは個人にできる社会貢献でしょう。
個人でも企業でも取り組めるSDGsの目標達成
SDGsは2015年の国連サミットで採択された、人類が今後も地球で暮らして行くための問題解決の目標です。17の目標が掲げられ、その中には働き方に関するものも含まれています。
SDGsは企業をパートナーとしており、本来の仕事にSDGsの考え方を取り入れることで、企業活動を続けながら地球に貢献することが可能です。SDGsの目標が達成されれば、多様な働き方も実現できるのではないでしょうか。
SDGsに関する企業の取り組みについてはキャリアノヒント「注目業界」でも解説しています!