2018年の6月に成立した働き方改革関連法。大企業は2019年の4月から適用となり、中小企業は2020年の4月から適用されています。
働き方改革により柔軟な働き方の実現を目指し、ワーク・ライフ・バランス推進や長時間労働の見直しが進んでいます。
残業時間に上限が設けられるなど、長時間労働是正が進むなかで「ジタハラ」と言われる時短ハラスメントが問題になっています。
時短ハラスメントって何?
時短ハラスメントとは、業務時間の短縮を強要して職場で起こるハラスメントです。「ジタハラ」と略されることもあります。
働き方改革による残業削減から、まだ仕事が残っているのにもかかわらず早く帰らされ、残りの仕事が回らなくなり、従業員に負担がかかることがあります。
時短ハラスメントの具体例として、業務の改善や見直しを行わないで業務時間を短縮すること、従業員に労働時間の短縮を強要して厳しいノルマを課すこと、達成できない場合に叱責することが挙げられます。
時短ハラスメントは、仕事を中断させられるため、業務が回らなくなり、従業員に負担がかかります。
企業側では、定期的な教育や相談窓口の設置など、対策が必要です。時短自体が悪いわけではなく、仕事に支障が出ることが問題であることに注意が必要です。
ハラスメント研修を実施する「株式会社リスキル」の記事では、企業側が実施できる時短ハラスメントの対策について解説されています。
参考:
時短ハラスメントの概要・対策方法を解説【勤務時間短縮による働きづらさを解消する】
時短ハラスメントの問題点とは?
時短ハラスメントが職場で起こると、以下のような問題点が生じます。
従業員のモチベーションが低下しストレスが増加する
時短ハラスメントにより、仕事が回らず残業や残りの仕事が増えることで従業員のモチベーションが低下し、ストレスが増加します。
過剰な労働負荷や時間の制約により、家庭やプライベートの時間が取れなくなることも原因になります。
モチベーションの低下やストレスの増加は、従業員の健康やメンタル面にも悪影響を及ぼし、企業や従業員にとってマイナスの影響をもたらします。
生産性が低下する可能性がある
従業員の業務負荷が増加し、仕事が回らなくなるため生産性が低下する可能性があります。
時間短縮が目的となり、スピードを優先して業務を進めるようになると、仕事の質が低下する恐れもあります。
企業にとっても生産性の低下は損失につながるでしょう。
中間管理職の負担増加や離職率の増加する
従業員の不満が高まることで中間管理職の負担が増加します。さらに離職率の増加につながる可能性があります。
従業員のストレスやモチベーション低下は上司との信頼関係を損なうことにもつながるため、企業側は、従業員のニーズに寄り添い働き方改革を進めることで、中間管理職の負担増加や離職率の増加を回避する必要があります。
どんなものがある?時短ハラスメントの事例
自分が会社で時短ハラスメントを受けているのか、どうやって判断したらいいか分からないという方もいるはずです。
時短ハラスメントの事例をチェックしていきましょう。
サービス残業をさせられる
働き方改革によって残業を禁止する会社が増えたため、仕事が残っていても残業することを許してもらえない場合があります。
その結果、どんどん仕事が溜まっていって、残業代が出ないサービス残業をせざるを得ない状況になるでしょう。
また、早く帰ったのにも関わらず、自宅で残りの仕事を片付けなければいけない可能性も出てきます。
このように、従業員にサービス残業をさせるのは時短ハラスメントと言えます。
また、出来るだけ残業をしないようにするため、休憩時間を削って仕事に充てるという方もいるでしょう。
プライベートな時間や休憩時間を確保できずに仕事に追われる日々を過ごしていると、健康面にも営業を及ぼすことになります。
仕事を早く終わらせるよう責める
残業をせずに早く家に帰ってもらうために、上司が部下に対して「早く仕事を終わらせろ」「どうして出来ないんだ」などと責めるのも時短ハラスメントの特徴です。
一生懸命頑張っている従業員がストレスを抱えてしまうような環境だと、仕事がしにくくて効率が下がってしまう可能性もあります。
また、上司からの圧が強くて精神的な負担が大きくなるということも考えられるでしょう。
そのような状態が続くと、体調を崩して会社を休みがちになってしまう場合もあります。
時短ハラスメントの対策とは?
自分が時短ハラスメントを受けていると感じたら、すぐに対策を取ることが大切になります。
ずっとそのままにしておくと、体調を崩してしまったりして自分らしく働くことが出来なくなってしまうからです。
それでは時短ハラスメントの具体的な対策について見ていきましょう。
また、自分一人の力では解決することが出来ないと思ったときに相談する機関についてもご紹介していきます。
仕事量を見直してもらう
会社側から早く帰るように言われてしまうため、仕事が終わらず従業員にばかり負担がのしかかっていきます。
そのため、働く時間に見合った仕事量に変えてもらう必要があります。
今のままの状態だと時間が足りずに大変だということを伝えていきましょう。
自分の上司に対して、時間内に終わる仕事量を提案したりするなど、自分から職場環境を改善するために動いていくことが大切です。
自分一人だけだと不安な場合は、一緒に働いている従業員たちで話し合い、協力しながら上司に見直しを求めるといいでしょう。
直属の上司の力では改善が見込めないと思ったら、会社の上層部に直接意見を伝える必要もあるかもしれません。
自分の所属している会社のどこに意見を伝えたらいいのかきちんと調べて、適切な対応を取りましょう。
サービス残業をやめる
会社からの要求で今までサービス残業を行っていた方も多いでしょう。
しかし、それらは時短ハラスメントになるので、サービス残業をやめて働いた分の残業代はしっかり払ってもらうようにすることが大切です。
自分が残業をしたことの証拠を提示する必要があるので、記録を残しておかなければいけません。
メールなどは削除せずしっかり取っておきましょう。
周りの人に現状を話す
残業せずに帰らせるために、上司からキツイ言葉をかけられてしまうこともあるかもしれません。
そんな時は、誰に何を言われたのかを記録しておき、周りの信頼できる人に話してみるのも時短ハラスメント対策になります。
会社の中で影響を持っている人に時短ハラスメントを受けていることを話せば、上司に注意をしてもらえる可能性もあります。
時短ハラスメントについて会社全体が考えるきっかけにもなるでしょう。
しかし、ここで注意したいのは、上層部への伝え方を間違えれば上司との関係がギクシャクしてしまう危険があるということです。
仕事がやりにくくなってしまったりすると職場の雰囲気が悪くなるので、感情的にならず冷静な状態で話すように心がけるといいでしょう。
もし直接話すのが難しければ、メールなどを利用するという手もあります。
適切な相談先に頼ることも大切
時短ハラスメント対策として、従業員の立場になって考えてくれる機関に相談するという方法も知っておくといいでしょう。
労働基準監督署は、残業代を支払ってもらえない時に相談する場所です。
窓口を調べて問い合わせをしてみると、適切な対処の仕方を教えてくれるでしょう。
また、総合労働相談コーナーに、時短ハラスメントによって被った精神的・肉体的負担などの相談をすることも可能です。
利用に関してはお金がかからないので、気になることがあれば気軽に話を聞いて問題を解決していきましょう。
所属している会社によっては、社内に相談窓口を作っていることもあるので、その場合はそこに話を聞いてもらうようにすると安心です。
まとめ
時短ハラスメントが続いたら、自分らしく働くことが出来なくなってしまいます。
そのため、自分で出来る対策を行ったり、然るべき相談窓口に話を聞いてもらったりして、時短ハラスメントを改善していくようにしましょう。