人生100年時代となり「キャリアは自己責任の時代」などと言われるようになりました。
終身雇用制度の崩壊や多様な働き方を推進する働き方改革など、労働環境も大きな転換期を迎えています。
リクナビが以前に実施した調査では、転職活動をしたことがある人は6割以上、40代では8割を超えるという結果になるなど、転職が当たり前な社会となるなかで、自身のキャリアに責任を持ち計画・行動することを難しく感じる人も大勢いるのではないでしょうか。
そこで今回、キャリアコンサルタントの中野敦志さんに「キャリア」についてお聞きしたいと思います。
キャリアに関する基本的なことから、素朴な疑問、キャリアを構築するためのポイントなどをお伺いしていきます。
「キャリアコンサルタントに聞いてみよう!」 第2回目です。
中野 敦志(なかの あつし)さん
キャリアコンサルタント。 1984年関西大学卒業後、約34年間、在阪の一部上場企業に勤務。在職中は、営業を8年、その後システム部門に異動し、23年間社内SEやマネジメントとして活躍、その後2年間人事部で社員のキャリア開発を担当しました。 2016年12月国家資格キャリアコンサルタント試験に合格し、翌年1月に登録。2018年2月に34年働いた企業を希望退職しました。 たのしくはたらくを理念として掲げる。
https://wobac.work/
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やりたいことがない!という場合はどうすればいい?
自分らしいキャリアを築いていきたいと考えている人も多いと思いますが、「何がしたいかわからない」という人や、何がしたいかわからない中で「どのようにキャリアを考えれば良いかわからない」と感じている人もたくさんいると思います。
今後のキャリアについてちゃんと考えていこうと思っていても、やりたいことが特になく、何から手をつけて良いかわからないという人も多いと思います。
最初からやりたいことがある人はなかなかいないものです。
やりたいことがみつからない時、キャリアを考えるために何から取り組めばいいんでしょうか?
こんなこと楽しそうだなとか、こんなことやってみたいなとかはあるはずです。そういう自分の直感でよさそうだなと思うことにチャレンジしていけばいいと思っています。
仕事・職業としてやってみたいことを考えてみればいいんでしょうか?
キャリアチェンジのコツは、まずやってみることです。やりながら考え修正していけばいいのですよ。
自分にできるのか?向いているのか?など
興味のある仕事でも、自分に経験がないと働いているイメージが湧かないのではないでしょうか…
人間はひとつのことだけでなく色んなことに長けています。特にこれからの社会は、いままでにない仕事がどんどん生まれてくる時代です。いまの仕事の形にこだわることは、自分の制約を増やしていくだけです。仕事や職業から離れて発想してみてはいかがでしょうか。
仕事や職業から離れて発想することがポイントですね。目の前のことを意識しすぎると、かえって視界が狭くなる気がします。
ありきたりですが趣味とか、子供の頃やってみたかったことから発想することが大切だと思います。
例えばどんなことがありそうでしょうか?
小さい時に俳優になりたかったけど、40を過ぎてもう今更遅いなんて考えている人なら、もう一度ミドルシニアとしての俳優にチャレンジする。バンドに憧れてミュージシャンになりたかったけどなれなかった人は、バンドマンのサポートをする。
昔の夢や取り組んできたことで、今も諦められないことを思い出してみるのが良さそうですね。
王道でのチャレンジも、サポーターとしてのチャレンジもあると思います。自分で制限をかけず、とりあえずやってみることが大切ではないでしょうか。
職種でキャリアを選択するというのは凝り固まった考え方
社会人として10年も経つと、それなりの経験を重ね自信を持って働くことができるようになります。これまで経験したこと以外にできることが思い浮かばない場合もあるのではないでしょうか。
例えば、営業として10年働いてきた人は、経験をいかして営業として生きていく方が良いのでしょうか?
営業しか経験がないからと言っていると一生営業をし続けなければなりません。部署異動はやりたいことを汲んで異動させてくれますか?会社に頼ってキャリアを作ってきた人は根拠もなく与えられた職種に一生縛られることになります。
会社に与えられた役割を必死でこなすことも大切ですが、たしかに与えられた役割で自分のできることを固定してしまうのは馬鹿らしいですね。
職種でキャリアを選択するというのは昔からの凝り固まった考え方だと思います。活かすのは職種のスキルではなく、10年間経験してきた「働く能力」の方だと思います。
「働く能力」ということは考えたことがありませんでした。 例えば営業一筋10年という方の「働く能力」とはどんなことが考えられそうでしょうか?
営業とは相手の気持ちを汲み取ったり、それを提案という形でアウトプットできる能力だったり、相手の話から課題をみつけて、その課題を解消していくような能力だったり、そもそも人のコミュニケーション能力だったり、色んな能力が考えられます。
なるほど、その仕事で培って来たことを振り返って言語化すると良いのかもしれません。
楽しい時や、乗り越えた時に発揮できた能力が何なのかを自分で考えることが大切です。
自分の経験や能力について、まずは自分一人で振り返るためにおすすめの方法などありますか?
一人で振り返るのであれば、ライフタイムチャートを書いてみる。単に山谷のラインを書くのではなく、山の時はなぜ山だったのか?谷を乗り越えたのは何があったからか?などその時の状況を克明に思い出して自分の感情と向き合うことが大切です。
一人で振り返るのはなかなか難しそうですね。
そうですね。実際はグループワークなどで他の方からのフィードバックやライフチャートから気づく事が多いです。 研修やワークショップではグループワークにたっぷり時間を取っていますね。
キャリアは損得ではなく積み重ね
知り合いから下記のような質問をいただきました。
「今の会社でも、まだできることはたくさんあると思います。ただ、今の会社で仕事を続けて40代を迎えたとき、今の上司みたいになりたくはないと、はっきり言えます。 かといって他にやりたいことがなく、転職する勇気もありません。とりあえず、転職活動をするほうがいいんでしょうか?」
上司の姿が、将来のなりたい姿ではないのなら、まずは転職を考えるべきなんでしょうか?
今の会社で出来ることがあるのならやるべきです。分かっているのにそのことに着手しないということは、どこに行っても何をやっても、損得勘定だけで行動する人間になってしまいます。
できることはあるとわかっていても、上司の姿をみて取り組む意味を見失っているようですね。
キャリアは損得ではなく、自分がやりたいこと、やるべきこと、やれることの積み重ねです。上司のようになりたくないと思うのはどんなところか?果たしてみんながみんなそうなるのか?自分だけはならないと思えないか?考えてみる必要があると思います。
確かに、仕事の不満だけ言って、できることをやらないのは自分にとってマイナスですね。何がやりたいことかわからない中でも、今の会社でできることがあるなら、まずはそこに集中した方がいいんですね。
はい、できることがあるのならまずはそれに集中した方がいいでしょう。
ただ、できることに集中した5年後に自分がどんなキャリアを築いているのか、不安になる方もいてそうです。
できること以外のこともやるといいと思います。他の人の仕事を手伝ったり、関連部署の仕事を知りその範囲までお手伝いしたり、すそ野を広げていくことによって自分の力は磨かれると思います。
前回、まずは小さな一歩を踏み出すことがキャリアを考えるうえで大事だと教わりました。
社内の活動に限らず、会社外のことにも首を突っ込んでみることで、たくさんの発見があると思いますよ。
まとめ
社会に出て数年が経つと、会社での役割や職種については答えることができても、自分のやりたいことが何か、わからなくなってしまうことがあります。
そんな時は、目の前のやるべきことに集中してみる、過去の夢や目標にチャレンジしてみる、他の人の仕事を手伝ってみるなど、ちょっとしたことに意識を向けて、取り組むことが大切。
そして、楽しい時や、乗り越えた時に発揮できた経験を振り返ることで自身に備わる「働く能力」を知ることがキャリアの選択に役立ちます。
やりたい仕事がみつからないという場合でも、これまで培って来たことを振り返って言語化し、まずは小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。