企業の価値を高め、これからも成長を続けていくためには、人的資本経営がますます大切になってきています。人的資本経営というのは、従業員の知識やスキル、経験といった「人的資本」を、会社の大事な資源として捉え、うまく活用していくための経営手法のことです。
単に人材を会社の道具みたいに扱うのではなく、一人ひとりの力を最大限に引き出して、会社と従業員がともに成長することを目指します。グローバル化が進んだり、技術革新のスピードが上がったり、働き方も多様になったりと、今のビジネス環境はめまぐるしく変化しています。だからこそ、人的資本経営への注目度が高まっているんですね。
こうした変化は、新しいチャンスをもたらす一方で、従業員のスキルや知識がすぐに古くなってしまうリスクも生み出します。そして、社会全体の価値観も変わってきたことで、企業には社会的責任や持続可能性への取り組みが求められるようになりました。
この記事では、人的資本経営の基本的な考え方から、なぜ重要なのか、企業が直面する課題にどう立ち向かえばいいのかについて、くわしく見ていきます。
人的資本経営の基本
人的資本経営は、従業員の才能やスキルを経営資源として最大限に活かすことを目指します。ここでは、この考え方の基本と、なぜ大切なのかを説明して、企業の課題解決にどんな役割を果たすのかを探っていきます。
人的資本経営ってどんなもの?
人的資本経営というのは、従業員の能力やスキルを会社の価値向上につなげる経営手法のことです。この考え方では、従業員の知識や技術、健康、価値観といった個人の資質を「資本」として捉え、それを組織全体の成長や競争力アップに活かそうとするんです。
背景には、グローバル化や技術革新が急速に進んで、ビジネス環境が大きく変わってきたことがあります。これを受けて、企業は従業員の力を最大限に引き出して、持続的な成長を目指さないとならなくなりました。
人的資本経営の目的とメリットは?
人的資本経営の主な目的は、従業員の能力開発とやる気を高めることで、組織全体のパフォーマンスを上げることです。これにより、企業の生産性が上がり、イノベーションが促進されて、結果的に企業価値の向上に期待できます。さらに、従業員の満足度が上がれば、優秀な人材の定着率にもつながります。
国内外の動向と情報開示のトレンド
世界各国で人的資本に関する情報開示の重要性が高まっており、投資家やステークホルダーからの要求も増えてきています。特に欧米では、企業の持続可能性やガバナンスを評価する上で、人的資本の管理がチェックポイントになっています。
日本でも経済産業省が人的資本に関するガイドラインを作るなど、人的資本経営への取り組みが強化されています。こうした動きは、企業が従業員の健康や教育、職場環境にどれだけ投資しているかを見える化して、組織の持続可能性を測る物差しになっています。
なぜ今、人的資本経営なの?
人的資本経営への注目度が高まっているのは、経済と労働市場の変化、投資家の期待の高まりが背景にあるからです。
社会・経済環境の変化
近年、社会と経済の環境は目まぐるしく変化しています。グローバル化が進んだり、技術革新のスピードが上がったり、パンデミックの影響で企業経営に新たな課題が出てきたりしているんです。こうした変化に対応して、競争力を保つには、従業員のスキルや能力を最大限に活かして、柔軟な経営戦略を立てることが欠かせません。だからこそ、人的資本経営への関心が高まっていると言えます。
労働市場の変化と人材の多様性
労働市場の変化も、人的資本経営への注目度を高めている要因です。少子高齢化が進む中、女性や高齢者の労働参加、働き方の選択肢が広がりなど、企業にとっては、多様なバックグラウンドを持つ人材を活用する機会が広がっています。こうした多様な従業員の力を組織全体で引き出せれば、イノベーションの源泉にもなるでしょう。
投資家とステークホルダーの期待の高まり
投資家やステークホルダーが企業に求めるものも変わってきています。それが人的資本経営への注目度アップにつながっています。持続可能な成長を重視する投資家は、企業が従業員の幸せや成長の機会にどれだけ投資しているかをチェックするようになりました。企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みが評価される中で、人的資本経営は企業価値を高める重要なファクターとなっています。
人的資本経営を推進する「3P・5F」
「3P・5F」は、企業価値を高め続ける人材戦略に必要となる「3つの視点(Perspectives)」と、どんな企業でも共通して戦略に組み込むべき「5つの要素( Factors)」を示したものです。この枠組みを理解し、実践することで、企業は持続的な価値創造を実現できるでしょう。
3P:人的資本経営の戦略に必要な3つの視点
3Pは、企業価値の向上につながる人材戦略かどうかを検討する際に重要な3つの視点を示しています。
- 経営戦略と人材戦略の連動
経営戦略と人材戦略が連動していることが重要です。例えば、海外進出を目指すなら、語学堪能な人材を集めるなど、戦略に合った人材を確保することが必要でしょう。 - As is-To beギャップの定量把握
現在の姿(As is)と理想の姿(To be)のギャップを数値化し、定量的に把握することが求められます。 - 企業文化への定着
戦略がうまくいったかどうかを企業文化への定着度で測り、将来を見据えた人材戦略を再検討することが大切です。
5F:人的資本経営の戦略に必要な5つの共通要素
5Fは、企業価値の向上につながる人材戦略のために、どんな企業でも共通して組み込むべき5つの要素を示しています。
- 動的な人材ポートフォリオ
社内の人材分布を把握し、適材適所に配置することで企業価値を高めます。 - 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
従業員の多様な知識や経験を認め、企業の中に取り込むことが重要です。 - リスキル・学び直し
個人のリスキルやスキルシフトを促進し、専門性を向上させることが求められます。 - 従業員エンゲージメント
従業員がやりがいを感じ、主体的に業務に取り組める環境づくりが大切です。 - 時間や場所にとらわれない働き方
安全で安心して働ける環境を平時から整えることが必要です。
「3P・5F」は、人的資本経営を推進するための重要な枠組みです。この枠組みを活用し、人材戦略を練ることで、企業は持続的な価値創造を実現できるでしょう。
人材こそが企業の価値を高める源泉であることを認識し、人的資本経営に取り組むことが今後ますます重要になってくるでしょう。
実践していくためのアプローチ
人的資本経営を実践するには、戦略的なアプローチが必要不可欠です。ここでは、企業が人的資本経営を具体的にどう進めていけばいいのか、実践的なアプローチを3つ紹介しましょう。
戦略人事の推進
人的資本経営を実現する上で、戦略人事の役割はとても重要です。企業は、従業員の能力開発やキャリアパスの設計、パフォーマンス管理など、人事戦略を経営戦略と密接に連携させなければなりません。戦略人事は、組織の目標達成に向けて人的資源を最適に活用するための計画を立て、実行するんです。これには、従業員のスキルセットに基づく適切な人材配置や、継続的な学習と成長の機会の提供などが含まれます。
人材育成の取り組み
人材育成は、人的資本経営の中心的な要素です。従業員のスキルと能力を高めるために、継続的な教育プログラムやトレーニングを実施することが大切です。オンラインコースの提供、ワークショップやセミナーの開催、メンタリングやコーチングの機会の提供など、さまざまな方法があります。人材育成の取り組みを通じて、従業員は新しいスキルを身につけ、自己実現を図りながら、企業の成長に貢献できるようになるんです。
企業文化と働き方の変革
持続可能な人的資本経営を実現するには、企業文化と働き方の変革も欠かせません。企業は、従業員が安心して挑戦できる環境を整え、イノベーションを促進する文化を育てていくべきです。また、柔軟な働き方を支持し、従業員が仕事と私生活のバランスを取りやすい環境を提供することで、エンゲージメントと生産性を高められます。企業文化の変革は、トップダウンで明確なビジョンを共有し、全従業員がそのビジョンに向かって一丸となって取り組むことが重要です。
まとめ
人的資本経営は、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、企業の競争力を高める戦略的な取り組みです。社会・経済環境の変化に対応し、持続可能な成長を遂げるには、人的資本を経営の中核に据えることが不可欠です。
戦略人事の推進、人材育成、企業文化と働き方の変革など、人的資本経営の実践には具体的な手段があります。企業がこれらに真摯に取り組めば、激動の時代を乗り越え、明るい未来を築けるでしょう。人的資本経営の本質は、従業員の力を信じ、会社と従業員がウィンウィンの関係を築くこと。これからの時代、その重要性はますます高まります。
みなさんの会社でも、人的資本経営の考え方を取り入れ、従業員の可能性を存分に引き出してください。きっと、会社の未来はもっと輝かしいものになるはずです。