DXという言葉、最近では当たり前のように聞くようになりました。
DXによって生産性が高まり仕事を効率的に進めることができるようになる反面、省人化や自動化により職場の人間関係や人とのつながり、チームの一体感が失われてしまうのではないかと感じてはいないでしょうか。しかし、DXによって仕事が効率化されることで、個々の理想とする働き方を実現できる機会が増えることに繋がる可能性があります。
時間にゆとりが生まれ、本来取り組むべき仕事や、やってみたかったことにチャレンジできる機会が増えることで、チームや組織の活性化にもつながります。そこでここでは、まずDXとは何か?働き方との関係について理解していきましょう。
DXとは?
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略した言葉です。スウェーデンの大学教授「エリック・ストルターマン」によって提唱されました。ITの活用により固定観念や古い習慣を大きく変え、企業の競争力を高める仕組みづくりを指した概念です。
経済産業省の「『DX推進指標』とそのガイダンス」(2019年、経済産業省)では、DXを次のように定義づけています。
DXは、本来、 データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくことである、そのために、ビジネスモデルや企業文化などの変革が求められる。
「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き
DXが注目される理由
DXが注目される理由として次のような点が挙げられます。
急速に進むデジタル化
世界全体でデジタル化が進んでいます。スマートフォンの普及によりインターネットを活用したサービスが次々と誕生しています。今後あらゆる業種や職種で、ITを活用していないビジネスは通用しなくなると考えられています。
2025年の壁
日本企業の多くが、既存の古いITシステム(レガシーシステム)を利用しています。一部の大企業のみがDX推進に取り組んでいる現状のなか、2018年に経済産業省が発表したDXレポートでは2025年を境目に多くの問題が企業の前に立ちはだかるだろうと予想しています。 2025年までに日本企業がデジタル化に取り組まなければ、日本企業全体で最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が出ると予測しています。
働き方やライフスタイルの多様化
新型コロナウィルスの感染拡大によりICTを活用したテレワークの導入が進み、さらに正社員や働く場所にとらわれないリモートワークやワーケーションなど多様な働き方に注目が集まっています。ビジネススタイルの変化や消費行動の変化により企業にも変革が必要となっています。
DXと働き方改革
働き方改革とは「格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点」で取り組み、働く人それぞれが抱える事情に応じた「多様な働き方」の実現を目指すものです。
冒頭でも述べた通り、DXと働き方改革にはチームや組織の活性化のために深いつながりがあります。
テレワークの導入
テレワークは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語であり、『情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと』です。ICT を活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方として、急速に進む少子高齢化や生産年齢人口の減少など、社会の大きな変化によって生じる日本のさまざまな課題を解決することにつながるとされています。
ITによる業務効率化
ITツールの活用が進むことでさまざま業務が効率化します。電子承認や電子契約など、これまで紙を使って行われていた業務の非効率が見直されることで、それぞれの業務フローが改善され作業時間の短縮につながります。紙の書類の出力や郵送も必要なくなり、オフィスに出社しなければならない業務が減少し場所を選ばない働き方も実現できるようになります。
RPAの活用
RPAは集計や入力作業などのパソコン業務を自動化できるソフトウェアです。RPAの導入によって、人が行う必要のない単純な業務や作業を自動化することで、作業時間の短縮や業務負担の軽減につながります。クリエイティブな仕事や企画・戦略立案など、人にしかできない業務に集中することで企業全体の生産性向上が期待されます。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」
「DX推進ガイドライン」は2018年に提言された「DXレポート」に基づいて作成されましたが、その後、「デジタルガバナンス・コード」と統合され、「デジタルガバナンス・コード2.0」としてまとめられています。
デジタルガバナンス・コードは、DXの推進に向けて企業や経営者が実施すべき事項を取りまとめた文書です。情報処理促進法に基づく形で2020年11月に策定され、2022年9月に改訂され、「デジタルガバナンス・コード2.0」として公表されました。
DX人材に必要な3要素
変革や改革には反対勢力がつきものです。DX推進の重要性は理解できるとしても、いざ既存業務を新たなシステムに置き換えるとなると社内から抵抗も生まれるでしょう。
DXを推進する人材には以下の要素が必要です。
全体を把握する
DXを推進する一方的な意見だけでなく、利害が対立する複数の部門それぞれの関係者の合意を取り付けられる共通の目標が必要です。自社の状況を俯瞰で眺め、社会や業界、競合が今どのように動いているかを把握した上で、自分達が取り組むべき提案をまとめる必要があります。
対話
新たな手法や技術を活用して変革を進めていくうえでさまざまな問題が発生します。「おかしい」と感じたらまずは声をあげ話し合う必要があります。思い通りにプロジェクトが進まない恐れがあるからと、議論を避けることで、かえってプロジェクトが停滞することはよくあります。メンバーからの意見をしっかりと聞く姿勢を持って対話することが大切です。
自分の言葉で語る
他者に理解してもらうために、耳障りの良いどこかで聞いたような言葉を並べてもうまくいかないでしょう。他人事ではなく自分ごととして問題に取り組み自分の言葉でかたらることで理解が得られます。必要な情報はインターネットを介して集めることができる時代。単に情報を集めて右から左に流すのではなく、自分自身で判断して語り他者と共有することがプロジェクトをうまく進めるポイントです。
これら3つの要素はオモシゴで大切にしている対話の場で実践していることです。
DXを推進する組織が力を発揮するためのタックマンモデル
タックマンモデルは、1965年にタックマンという心理学者が提唱した組織を成長させるステージを5段階に分けて考える手法です。組織づくりは最適な人員や機能を整えたら終わりではなく、組織の成長と共に多くの問題に直面します。ステージごとの問題を解決することで理想の組織に成長していきます。
DXを推進だけでなく組織変革の場面では、タックマンモデルをおさえておきましょう。
タックマンモデルの5つのステージ
形成期
チームが形成された初期の段階。お互いのことをよく理解しておらず、チームの目標に対して受動的な状態を指します。形成きでは、お互いのことを理解し合うことが重要です。
混乱期
チーム内で意見がぶつかり合ってしまう段階です。お互いのことが分かりあえたとしても、仕事の進め方や考え方、価値観が異なるためメンバー同士が衝突してしまいます。チーム内の心理的安全性を確保することが重要です。
統一期
メンバーが目標を共有し、チームのルールやそれぞれの役割が明確になる段階です。お互いの考えを受け入れ尊重したコミュニケーションを取ることができます。チームマネージメントの重要性が高まります。
機能期
結束力が強まり、メンバーそれぞれのパフォーマンスを最大限に活用できる段階です。共通の目標に対して主体的に行動するようになり、成果も収めています。活発で建設的なコミュニケーションが取れる状態です。リーダーの役割として、働きやすい環境を整えることが重要になります。
散会期
プロジェクトが終了しチームが役割を終えた状態です。目標を達成したことでメンバーそれぞれが成長して新たなプロジェクトに参加していきます。チームで得たノウハウや知見を組織にストックしていくことが理想です。
混乱期を乗り越える方法
タックマンモデルの5段階の中で特に重要なステージは「混乱期」です。メンバー間の衝突など、うまくチーム運営できない問題が起こります。
混乱期を乗り越えるために、以下のポイントをチェックしましょう。
まとめ
ワークエンゲージメントが高まることで生産性が向上すると言われています。エンゲージメントは「従業員の会社に対する思い入れ・愛着心」を指し、ワークエンゲージメントを高めるには「熱意」「活力」「没頭」が必要とされています。
効率化や自動化という言葉は仕事が機械に置き換わり、人の温もりがない仕事のように感じる部分もありますが、機械でできる仕事は機械に任せることで、人にしかできない「熱意」が必要な業務に「没頭」できるようになり、仕事に「活力」が生まれることにつながるはずです。
とはいえ仕事には結果がつきもの。何らかの成果から対価として給料をもらっているわけです。ただ、数字に追いかけられることでモチベーションが下がることもあるでしょう。しかし、モチベーションが下がってしまうのは、「何のために働いているのか」「自分が何に取り組んでいるのか」など、仕事の意味や目的を見失っているのかもしれません。
働く意味が理解できているなら、DXによって本来自分がすべき業務に集中できることは、間違いなくチームに良い影響を与えてくれるはずです。
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出典:
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