初回で、主夫業の人脈は特別だと書きました。その理由は営利が関係のない人脈、生活に根ざした人脈、子どもの成長に寄り添った人脈だからです。 多くの主夫(婦)が赤ちゃんを授かった子育ての最初期に感じること。それは社会との断絶です。これは専業主夫でなくても、育休を取った親でも感じることです。
こんにちは。元専業主夫、現マジックパパの和田のりあきです。ここからは主夫(婦)の表記を著者の性別に合わせて主夫に統一します。
私は2004年3月31日まで、会社に通って同僚や先輩上司と普通に話をしていました。それが翌日の4月1日から急に日中の話し相手がいなくなったのです。会社を辞して主夫業をはじめた日でした。
我が娘は可愛いですけれど、話し相手にはならない。妻は仕事が終わらないと帰ってこないし、いくら妻とはいえ日常の話し相手が1人ではつらい。
話し相手に飢えた夫の話し相手にされる妻も、それが毎日ではつらいでしょう。 私はすぐに人恋しくなり、人との繋がりを求め始めました。
和田のりあき さん|マジックパパ代表
「子どもがワクワクする大人になる!」が合言葉。小四からマジックを独学。学生時代にはマジック道具の実演販売アルバイトでNo1の売り上げを記録。TVプロダクションに就職し報道カメラマンに。和歌山毒物カレー事件などで密着取材をする。子どもの誕生をきっかけに主夫になり2人娘を育てる。保育士資格を取得し、NPO法人ファザーリング・ジャパン関西理事長、保育園園長を経てマジックパパを起業。10年間で500回の子育て講座やイベントを開催。 和田さんプロフィール
キャリアノヒント特別連載。マジックパパ代表の和田のりあきさん「家事育児から広げるキャリア」第3回目です♪
アルバイトの人間関係
結局、専業主婦は5ヶ月でリタイアして、6ヶ月目から子どもを保育園にあずけてアルバイトを始めました。一般に言うパート主婦という立場です。
最初のアルバイト先はある企業の物流倉庫。同じアルバイトとして働いているのはほとんどが男性でした。子育てをしている人はゼロでした。これは私にとって問題でした。
保育園にあずけたばかりの子どもはしょっ中発熱します。保育園で発熱すると保護者は迎えに行きます。その度に、アルバイト先の上司や同僚に事情を説明して早退。翌日も熱が引かなければ、朝から欠席の電話をします。
そういったことに理解の薄い男性がほとんどのアルバイト先で、とても肩身が狭い思いをしました。
最初のアルバイト先は4ヶ月で断念をして、次のアルバイトに移りました。大きな映画館の売店です。そこには自分と近い立場の子育て中の女性が多数働いていて、上司も子育て中の状況に理解がありました。子育て中の親の他に、学生さんやフリーアルバイターといった様々な人も働いていました。
同じアルバイトとして対等のお付き合いを様々な立場の人とすることは、主夫にならなければ体験できなかったことかもしれません。
NPOとの出会い
アルバイトで人恋しさは解消されたのですが、もう一つ解消されない気持ちがありました。それは社会的立場の物足りなさです。主夫のアルバイトでは社会から認められている感じがしない。
いや、主夫もアルバイトもそれぞれの立場で役割を果たしています。だからこれはあくまでも自分の主観です。でも収入を得ていない、もしくは収入が少ない専業・兼業主婦の多くが持っている感覚でもあります。
そんな中で出会ったのがNPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)でした。NPO法人とは営利を目的とせずに社会課題の解決のために活動をする民間団体。
FJは「笑っている父親を増やす」ことをミッションに活動しています。このミッションをHPで見た時にこれは自分のための団体だ!とピンときて、すぐに入会をしました。
FJの会員のほとんどは子育て中の父親。共通点は父親だけなため、仕事や生活上のしがらみがありません。NPOのミッションという「目的」と、父親という立場での「共感」をベースとする人間関係は職場や家族とはまた違った快適さがありましした。
子育ては地域への窓
もっと身近なご近所にも、特別な人間関係はあります。僕が忘れられないのは、娘が保育園に通い始めた1週間目の出来事です。同じ0歳児クラスのママから「小児科はどこに行ってますか?」と聞いてくださったのです。
同じ時期に同じ年齢の子育てをしている『子育て仲間』での情報交換はとても新鮮なものでした。
保育園では同じクラスの保護者はもちろん、保護者会活動などでほかの年齢クラスの保護者ともお付き合いができました。特にちょっと先輩の上の年齢のクラスの保護者からの情報はとても役に立つものです。
子どもが小学校に上がると主にPTAを通して、地域活動に参加する機会が増えます。PTAに関しては否定的な意見もありますし、改善すべき所はした方がいい。
しかし、保護者が地域のことを知り、子育て仲間だけでなく、もっと上の世代の住人ともコミュニケーションを図れる場としてとても有益なものです。ネットなどで騒がれている世代間の断絶、上の世代の価値観を頭だけで考えて否定することがなくなります。
大人だけの生活には地域は必要ないかもしれません。職場と遊び場所と寝る場所があればいい。しかし子どもの成長にはその間にある地域が欠かせません。身近な地域が安心できる場所であれば、子どもはより伸び伸びと遊び、生活して成長することができます。
それを目の当たりにして学ぶことができるのも子育て主夫の特権です。
まとめ
主夫(婦)の社会的立場は弱いと捉えられることが多いかもしれません。職場から離れて収入が減ったり社会での役割がはっきりしなくなるからです。しかし逆に言えば、ニュートラルな立場で様々な人と付き合うこともできる立場なのです。
アルバイトをすればアルバイト同士の対等な立場で。社会活動に加われば同じ目的をもった似た立場の仲間と。地域で子育て中ならば子どもを中心に、稼ぐために長時間労働をしていてはなかなか難しい人間関係を築くことができます。
もちろん、それはパートナーが稼いでくれているからできること。そのことに感謝をするのは当然です。
一方で、主夫(婦)である自分にしかできない活動に参加して社会に貢献することに遠慮することはありません。そうした活動の場で新たなお付き合いを広げていくことは自身の将来のキャリアにもつながり、家族の未来も広げます。
次回のテーマは「サラリーマンへの回帰で気づいたこと」。お楽しみに♪