好きなことを仕事にしたいと考える人もいれば、仕事は仕事と割り切ることが大切だと考えることもできるでしょう。どちらの場合でも、自分なりの仕事に関わる考え方や姿勢を持つことは重要です。
人生100年時代をむかえ、働き方を会社任せにせず、自身で選ぶ責任が大きくなっています。
この記事では、好きなことを仕事にするために押さえておくべきポイントを解説します。
好きなことを仕事にするとはどういうことか
好きなことを仕事にして生きて行くことはとても難しいことという印象を持つ人も多いでしょう。例えば、ピアニスト。幼い頃から多くの時間と労力、お金を費やしても、プロの演奏家になれる人はほんの一握りです。
専門の技術を学び、想像できないほどの忍耐と努力を重ねたとしても、好きなことが仕事にできるとは限りません。また、いわゆる一流企業に入社するにもそれ相応の努力が必要ではありますが、今回のコロナ禍において仕事観や価値観が変わりつつある中で、心から好きなことを仕事にしたいと考えるようになった方が、増えてきているようです。
「好きなこと」と「楽なこと」は違う
先ほどのピアニストの例でも、たくさんの努力が必要であり、やりたくないことや苦手なことにも取り組む必要があります。
ミシガン州立大学が行なった研究では、「①好きなことを仕事にするのが幸せと考えるグループ」と「②仕事は続けるうちに好きになるものだと考えるグループ」では、幸福度・年収・キャリアなどのレベルは②のグループの方が高かったというデータもあります。
好きなことを求めるあまり、現実とのギャップに悩み幸福感が失われて行き、自身のスキルや仕事の向き不向きに悩み、また別の仕事に目が向いてしまうかもしれません。
しかし本来であれば、現実とのギャップを埋める過程も含めて、「好きなことを仕事にしている」と言えるでしょう。
今の自分の状態を知ろう:3つのゾーン
「コンフォートゾーン(Comfort Zone)」という言葉をご存知でしょうか。「コンフォートゾーン」とは「快適な場所」「居心地の良い領域」という意味の言葉です。
元ゼネラル・エレクトニック(GE)のノエル・M・ティシー氏は、人間が成長するメカニズムには3つのゾーンがあるとしました。
人が成長するメカニズム
以下3つのゾーンの特徴です。
コンフォートゾーン | ラーニングゾーン | パニックゾーン |
「快適な場所」「居心地の良い領域」。あまり不安を感じず、自分のもつスキルでほとんどのことに対応できる状態。 | コンフォートゾーンからひとつ外の領域。自分のもつスキルが通用しない未知の領域のため、様々なことに対応しないといけない。 | ラーニングゾーンのさらに外側の領域。何が起こっているかも分からず、コントロールが効かないため、思考停止状態。ストレス過多。 |
好きなことを仕事にしたいと悩んでいて、何か行動を起こそうとしているなら、いまはコンフォートゾーンにいないはずです。現状に疑問を感じて、未知の領域に一歩踏み出そうとしている状態はラーニングゾーンに入っていると言えるでしょう。
ここで大事な点は、ラーニングソーンが最も成長できる状態だということです。コンフォートゾーンを目指して、好きな仕事についたとしても、成長が止まりいつか環境に適合できず不満を抱えることになります。
今回の新型コロナ感染拡大のように、急な環境変化によってこれまでのやり方が通じなくなりパニックゾーンに入ってしまうことも考えられます。
たんにコンフォートゾーンを求めて好きなことを仕事にするのではなく、未知の領域にチャレンジする姿勢をもつことが大切です。そのためにも、自分がどうありたいか、自己実現したいかを考えてみましょう。
一人で考えることが難しい場合は、信頼できる友人や転職支援会社などのキャリアコンサルタントに相談してみるのが良いでしょう。
好きなことを仕事にするための一歩として
インターネットやSNSの発達にともない、誰もが簡単に多くの情報を得ることができるようになりました。さらに、世界中の人とアクセスすることができ、多くの人と繋がるチャンスがあります。
今の仕事や職場環境に大きな不安もなく、転職を考えていないとしても、まずは副業として好きだと思えることを始めてみるのも良いでしょう。
目先の集客ということだけに捉われずに、SNSを通して何かしらの発信を続けることで、新たな出会いが生まれるかもしれません。
また、好きなことや夢中になれる分野のコミュニティに参加することで、自身のチャレンジを応援してくれる人とも出会えるはずです。
好きなことを仕事にする覚悟
例えば、フリーランスとして好きなことを仕事として取り組むのであれば、働く時間や場所などは、ある程度自身で選ぶことができるでしょう。
好きな時に休日を決められ、煩わしい人間関係からも多少なりとも解放される点はメリットです。
反対に、全てが自己責任という、良くも悪くも責任転嫁ができないため、ややストイックなまでの本気度が当然ながら必要となります。
成果をあげているフリーランスや起業家の著書では、とにかく行動することが大切だと述べられています。しかもそのスピードが桁違いに早く、さらに考えながら行動に移しています。
忙しく動きながらも時間を捻出して、自身のためまた周囲の人のために働きかけを行っています。情報収集が早く、常に学ぶ姿勢で高いモチベーションをキープしています。
会社任せにできないキャリア構築
コロナ禍により時差通勤やテレワークの導入が進みました。会社員として、好きな時間や場所で働くことはなかなか難しいかもしれませんが、『キャリアオーナーシップ』という考え方が重要視されるなかで、自身の働き方を見つめ直す必要が出ています。
キャリアオーナシップは、経済産業省が掲げるこれから社会人に求められる人材像の中に含まれています。
「人生 100 年時代」においては、個人一人ひとりが「自らのキャリアはどうありたいか、如何に自己実現したいか」を意識し、納得のいくキャリアを築くための行動をとっていくこと、すなわち「キャリア・オーナーシップ」を持つことが重要。
経済産業省「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書
会社任せにせず自身の責任でキャリアを構築することが求められています。人生は長く、終身雇用という概念も薄れ、会社員であっても働き方は自己責任になります。
そこで『納得のいくキャリアを築くための行動』を取るためにも、一人ひとりが働く理由について考えていく必要があるでしょう。
与えられた課題をクリアすることを仕事としていたなら、「キャリアオーナーシップ」に取り組むためにも、まずはボランティアでも自身の興味関心の高い分野に飛び込んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
人生の多くの時間を働くことに費やします。働く時間がつならなければ、人生もきっとつまらなくなるはずです。
アフターコロナの社会では、今までにない新しい仕組みやサービス、取り組みが始まることが予想されます。しかし、その具体的な内容は社会全体が手探りで進めている段階です。
何が正解か分からない時代では、好きなことや自分が取り組みたいことを仕事にすることは決して間違いではないでしょう。
言えることは、現状に満足して成長を止めることは退化を意味する、ということです。
好きなことを仕事にするためにも、常に学ぶ姿勢で未知の領域にチャレンジすることが必要でしょう。