少子高齢化が進む日本において、人手不足は深刻な問題となっています。
しかしながら、それにもかかわらず、希望する会社に就職できないケースは後を絶ちません。
ここでは、いくつかの観点からその背景について見ていくことにします。
少子高齢化が進む日本の現状とは?
まずはじめに、人手不足の直接の原因となっている少子高齢化が進む日本の現状についてみておくことにしましょう。
高齢化の推移
日本の65歳以上の高齢者の比率は、1950年にはわずか5パーセントに過ぎませんでしたが、そこから年を追うごとに増加の一途をたどっており、1970年には早くも7パーセントに到達しました。
その後も、高齢化率は増え続け、1994年には高齢化社会の基準であるとされている14パーセントを超え、2018年には28パーセントにも上っています。
一方で、高齢化の進展と並行して、総人口は2010年の1億2800万人がピークとなっており、2018年には1億2640万人とわずか8年で150万人も減少しました。
その背景にあるのは、深刻な少子化で、1970年代から1980年代前半の高度成長期には150万人から200万人近くで推移していた出生数が、2020年にはわずか84万人ほどと半減してしまっているのです。
この少子化にはいくつかの要因が考えられます。
未婚化と晩婚化の進展
未婚率については、1980年以降、男女ともに急速に高まってきており、2000年を超えると男性では70パーセント前後、女性では60パーセント前後となっています。
それと並行して晩婚化も進んでおり、その結果、出産適齢期にあたる20代から30代前半の既婚者が減ってしまったことが、深刻な少子化を招いたと考えられているのです。
日本以外の先進国の多くも、同様に少子高齢化が進んでいますが、ここまで急速に変化を遂げている国は他にはほとんど見られません。
バブル崩壊以降、日本経済は長期的に低迷してはいるものの、それでも世界有数の経済大国として豊富な労働力を必要としていることに変わりはありません。
にもかかわらず少子化が進んでしまったために、労働力の供給が滞りがちとなり、それによって人手不足が加速度的に進んでしまってたというわけです。
採用に積極的な企業と消極的な企業の特徴とは?
前述のように、日本社会は慢性的に人手不足に陥っているわけですが、だからといって全ての企業が積極的に採用活動を行っているわけではありません。
企業の中には、採用に積極的なところと消極的なところがあります。当然ですが採用活動を行っていない企業に就職を希望して雇ってもらうことは難しいでしょう。
少しでも就職の可能性を高めたいのであれば、採用に積極的な企業の特徴を理解した上で、それに合致するところを中心に就職活動を行う必要があります。
採用に積極的な企業の特徴には、どういったものがあるのでしょうか。
成長産業を中心に事業を営んでいる
まず一つ目の特徴として挙げられるのは、成長産業を中心に事業を営んでいるということです。
成長産業の場合には、投資を行えば行った分だけ事業を拡大できるため、積極的に人材を集めようとしている企業が少なくありません。
例えば、代表的な成長産業であるIT業界では、少しでも優秀なエンジニアを採用しようと、多くの企業が好条件を提示して人材の獲得合戦を繰り広げているのです。
ナレッジワーカーの活躍の場がある
また、二つ目の特徴として、ナレッジワーカーの活躍の場が多くあるという点を挙げることもできます。
ナレッジワーカーというのは、著名な経済学者であるピーター・ドラッカーによって生み出された言葉で、高度な専門知識を駆使して経済的な利益を生み出すことができる労働者という意味です。
単純労働を行うマニュアルワーカーは人工知能やロボットによって代替可能ですが、ナレッジワーカーの場合には簡単に置き換えることができないため、そういった人材を必要とする企業の中には、採用に積極的なところが少なくないのです。
採用に消極的な企業の特徴
一方、採用に消極的な企業やそもそも採用しない企業の特徴は、積極的な企業の逆となります。
すなわち、衰退産業にある事業を手掛けていたり、マニュアルワーカーが多く活躍しているというのが、採用を控える企業の特徴であると考えておくと良いでしょう。
採用されやすい人の特徴とは?
採用に積極的な企業とそうでない企業があるように、採用されやすい人とそうではない人というものも存在します。
専門性が高い
まず、採用されやすい人の特徴として挙げられるのは、高度な専門性を有しているという点です。
テクノロジーの進歩によって、今や単純労働の多くはAIやロボットが代替できるようになっているため、いくら人手不足だからといっても専門性のない人材を積極的に採用しようという企業はそれほど多くはありません。
そのため、人手不足なのに採用してもらえないという悩みを抱えている人は、少しでも専門性を高めるための努力をしてみるとよいでしょう。
コミュニケーション能力が高い
また、コミュニケーション能力に長けているというのも採用されやすい人の特徴です。
組織を円滑に回すために高いコミュニケーションスキルは必要不可欠ですので、そういった能力を備えている人材であれば、引く手あまたとなる可能性は高いはずです。
リスキリングに取り組む
一方、専門性に欠けるうえに、周囲とのコミュニケーションを苦手とするような人は、いくら人手が足りない状況であったとしても、なかなか採用してもらうことはできないでしょう。
そういった人材は、ロボットなどで代替が効きますし、組織の和を乱す存在にもなりかねないからです。
もし自分が、これらの特徴に当てはまると考えられる場合には、改善に向けて手を打つようにしなければなりません。
さらに、仕事の進め方や取り組み方が大きく変化しており、今まで必要とされていたスキルでは通用しないケースが増えています。
デジタルトランスフォーメーションの推進に代表されるデジタル化の流れのなかで、IT系のスキルの要求が大きくなりました。リスキリングによって変化に柔軟に対応し、現場で活躍できるようになることが求められています。
将来的に人手不足は解消されるのか?
足元では深刻な人手不足に悩まされている日本経済ですが、このような状況は将来的に解消されるのでしょうか。
確かなことは誰にも分かりませんが、一つ言えるのは慢性的な少子高齢化が進む社会においては、人手不足を解消するというのは容易ではないということです。
社会が劇的に変化しない限りは、2050年に向けて少子高齢化は一段と進むと考えられていますので、少なくとも10年、20年といった期間で見た場合には、引き続き多くの企業は人手不足に直面し続けると考えておいて良いでしょう。
ただし、テクノロジーは今後ますます進歩していくことが予想されるため、人に代わってロボットが活躍する余地は拡大していくはずです。
そのため、人手に頼る必要のない分野の仕事については、いずれは人手不足は解消していくかもしれません。
自分磨きを怠らないようにしよう
以上で見てきたように、少子高齢化の益々の進展とともに、将来においても日本経済は慢性的な人材不足に悩まされ続ける可能性が高いと考えられます。
しかしながら、そのような状況下でも、企業が求めるのは高い専門性を有し、コミュニケーション能力に優れた人材となっていくことが想定されますので、自らの価値を維持し、高めていくためにも、常に自分磨きを怠らないようにすることが肝要です。