終身雇用制度が崩れつつある日本で、転職することは特別なことではなくなりました。しかしながら、何度も転職をすると、応募先の企業にマイナスのイメージを持たれるのではないかと不安になる人もいるでしょう。
そこで今回は、一般的な転職回数、企業の採用活動に影響を与える回数、転職回数が多い人に対する企業が持つイメージ、履歴書や職務履歴書の書き方、面接の対応などについて解説していきます。
ビジネスパーソンは転職を何回やっているのか?
株式会社マイナビが実施した『転職動向調査2022年版』の調査結果によると、2021年に転職した20~50代男女正社員の転職率は前年比2.1ポイント増の7.0%で、過去6年間で最も高くなりました。2016年から2019年にかけて増加傾向でしたが2020年には減少に転じていました。しかし、2021年は若年層中心に新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻り、過去6年間で最も高くなっています。
さらに転職回数は1回が最も多く、続いて2回、3回、5回という結果でした。これらの結果を見ると、転職者の大半が転職回数5回以下ということが見えてきます。ただ『転職動向調査2022年版』では、2018年と2019年には、8~10回、11回以上の転職をしたと回答した人がいなかったのに対して、2020年からはわずかですがこれらに回答する人がでてきています。
転職者の中には、回数を気にせず積極的に転職を繰り返す人もいます。転職を繰り返すということで不安定な印象を与えてしまうこともありますが、納得できるまで転職を繰り返すことで得られるものもあるでしょう。
転職回数が何回目なら企業からマイナスのイメージを持たれるのか
転職をしても納得できる職場にめぐりあえるとは限りませんが、さまざまな職場を渡り歩き、知識・経験を得てキャリアアップを図る人もいるでしょう。そういう点では、転職を繰り返すことは悪いことではありません。しかし、一般的には、転職回数が多いことは転職活動に不利だとされています。
では企業の人事担当者は転職回数を何回目から気にするのでしょうか?
少し古いデータですが大手転職・求人サイトのリクナビNEXTが2017年に行った『リクナビNEXT採用実態調査』によると、転職歴が何回目から気になるのかというアンケートに対して、3回目という回答が40%でした。そして4回目が16%、5回目が12%という結果となっています。
「気になる」というのが直ちに不採用へと繋がるわけではないでしょうが、転職回数が多いことで転職に不利になるという可能性は否定できません。一方で、その調査では採用者の転職回数についてもアンケートを取っており、採用した人で一番多かった転職回数は3回目が28%、4回目と5回目が22%という結果となりました。アンケートでは、転職をした理由の背景となる明確なビジョンやポジティブな意見を伝えられるなら、転職回数が多くても採用するという声が見受けられます。
転職回数に対してマイナスのイメージを持つ人事担当者はいるとしても、転職活動の中でその理由を伝えられるようにしていれば、企業に採用してもらえる可能性は十分あります。
転職回数が多い人に対して応募先の企業が抱くイメージ
転職回数が多いことで人事担当者に与えるマイナスイメージとしては、「長続きしない」というものがあります。ひとつの職場に長くいられないのは、「堪え性がない」「能力がない」と感じる人事担当者もいます。求人企業として、採用活動や人材育成のために必要な費用や時間を考えると、たいした理由もなく短期間で辞めてしまう人材を採用することは避けたいところでしょう。
しかしながら「キャリアアップのため」「家庭の事情で働き方を変えなければいけない」などの理由であればしっかりと伝えるようにしましょう。一般的に、最低でも3年は働ける人物だと見なされればマイナスイメージはなくなるでしょう。転職活動時には、その点をよく気をつけましょう。
逆に転職回数が多いことで、ポジティブな印象を持たれる場合もあります。例えば、管理職として複数の企業を渡り歩いている人材は、豊富な経験・スキルを持っている人物と評価される場合があります。そのような人物は、即戦力として期待できるため採用される可能性が高まります。
さらに、応募先の企業の業務や風土をよく理解し、自らのビジョンと一致していることをアピールできた人に対しては好意的に受け止めてくれます。どのような職場なのかを理解した上で、転職をするのであればミスマッチは起こりにくく長期的に働いてくれる人材として考えてもらえるでしょう。
転職エージェントからみた転職回数
関西メーカーJOB.jp(関ジョブ)を運営するジャパンナヴィゲイトの森田氏は、転職エージェント側の立場として、「やはり求職者には思い入れがある」「回数が多いとしても、なんとかご支援をしたい」とおっしゃいます。
採用企業側以上に「入社して欲しい!」という心理があり、採用企業よりも転職エージェントは肯定的に捉える傾向があります。もちろん担当者の中には採用企業の視点でよりシビアにみる人もいます。
採用企業側に「推薦」をする立場として森田氏がおさえるポイントは、次の3つでした。
- どんな理由で辞める事が多いのか?
- どんな企業だと受け入れが可能なのか?
- こらえ性があるか?
森田氏からのアドバイス
人はそれぞれに「辞めたい」と考える時の傾向があり、私はそれを「辞め癖」と呼びます。人それぞれに「辞め癖」がありますが、3年未満で何度も転職を繰り返している場合は、転職という選択ではなく、まずはある一定の辛抱をして、自分と違う考えを受け入れる。その後、転職を考えるようにすると良いのではないでしょうか?
(関西メーカーJOB.JP 森田氏)
転職を成功させるための履歴書・職務経歴書の書き方、面接の答え方
転職回数が多い場合は、最適な履歴書・職務経歴書の書き方を意識しましょう。
履歴書の書き方
転職回数で変わる部分といえば職歴です。転職を重ねると職歴に収まらない事も考えられますが、職歴は残さず書くことが大事です。
一般的な職歴は入社と退社の行を変えて書くのですが、スペースが無いのであれば、入社と退社を同じ行に書いておくとか、概要だけ書いておき職務経歴書に詳細を記載する旨を入れておくことで対応ができます。
職務経歴書の書き方
これまでの経験を人事担当者に伝えられるような書き方を意識しましょう。在職した会社名と規模(従業員数や資本金)・在職期間・業務内容・実績などを整理して具体的に書いていきます。会社の規模や業務内容・実績などは、数字が出せるようならば詳しく書いておく方が良いです。
業務の中で取得したスキルがあれば、資格名なども交えて書いていきます。実績について、職務経歴書に書けるようなものがないときには、仕事をしていて努力したことなどを詳しく書いておくことで、仕事に対する姿勢を伝えることができます。
複数の職歴を通じて、売上目標の達成や業務の効率化など大事にしてきたことがあれば、それも書くようにしましょう。転職回数が多いとしても、一貫したポリシー・働き方を職務経歴書から読み取ることができれば人事担当者はポジティブな印象を持ってくれます。
逆に、場当たり的な転職を繰り返し、何を得たのかわからない内容であれば、採用される可能性が低くなるので気をつけなければいけません。
自己PRのまとめ方
人事担当者は、職務経歴書の自己PRを読んで自社に貢献してくれる人材かどうかを判断します。採用された場合、これまでの転職経験で得た知識やスキルをどのように活かせるのかを具体的に書きましょう。
実績や取得した資格などを根拠とすることで、自己PRに説得力を持たせることができます。加えて、人事担当者が気になる「長続きしないのではないか」という不安の払拭も必要です。
「こういったことをしたいので長く働きたい」という書き方にしておけば、印象はよくなるでしょう。
面接での対応
面接での対応は、基本的に履歴書・職務経歴書の内容に沿ったものです。転職した理由をポジティブに伝えること、転職に一貫性があることを意識しましょう。
もし、人間関係や低賃金など不満を抱いて転職した場合には、それをポジティブな言葉に言い換える工夫が必要です。何も理由がなかった場合は嘘で隠さず正直に伝えます。それでも、応募先の企業で働きたいというやる気を見せれば、採用される可能性が高まります。
転職回数が多いとしても諦めてはいけない
転職を2回、3回と繰り返していると、これ以上の転職が難しいと考えてしまう人もいるでしょう。たしかに転職回数が多いことで、人事担当者にマイナスのイメージを抱かせることもありますが、明確な転職理由を伝え、応募先の企業で働く熱意を見せることができれば、採用してもらえる可能性は十分にあります。
働きたい職場があれば諦めずに応募し、履歴書・職務経歴書や面接での答えを工夫して人事担当者にポジティブなイメージを抱いてもらえるように準備しましょう。
年齢が転職に与える影響についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください!
参考:
転職回数、何回までOK?~採用企業、転職エージェント、自身の転職経験の3つの視点から考える~(森田秀司のnote)
転職動向調査 2022年版(2021年実績)
転職回数が多いと不利?年代別の転職回数と採用実態