転職活動で必要な書類に、「履歴書」と「職務経歴書」があります。応募した仕事にふさわしいかどうか判断してもらうためには、これまでの経歴やスキルをまとめて提出する職務経歴書で十分なはずなのに、履歴書もなぜ必要なのか、と考えたことがあるかもしれません。
この記事では、企業から見た履歴書の役割と職務経歴書との違いや、応募先企業にアピールするために重要な履歴書の作成ポイントも、合わせてお伝えします。
履歴書とは?転職活動に必要な理由はなぜ?
履歴書は、転職活動になぜ必要なのでしょうか。履歴書とは、本人の氏名、住所から学歴、職歴、保持している資格などの基本事項を記載する書類です。細かな項目は選ぶフォーマットによって異なるものの、一般的に流通している書式には、志望動機や勤務地・勤務時間といった希望条件の記載欄もあります。企業側から見ると、履歴書1枚で応募者の基本的な情報がすべて確認できる、効率的な書類です。
応募時には「身元証明」にもなる
履歴書がなぜ必要かというと、応募時の「身元証明」になる、という理由が大きいでしょう。求人への応募時から、本人確認書類などの身分証明書の提出を求める企業は多くありません。応募者の自著(手書き)、または本人作成の履歴書が、選考時の身分証明の代わりとして確認されるからです。
法的な効力のある書類ではありませんが、履歴書に書かれている内容には偽りがないものとして取り扱われるのが、社会一般の慣習となっています。採用されれば長い付き合いになる可能性のある企業との間で、信頼関係のもとになる書類ですから、内容は正確に記載しましょう。
採用後にも企業が必要とするのは、「労働者名簿」を作成するため
企業が日雇い以外で従業員を雇う際には、「労働者名簿」を作成しなければならないことが、労働基準法で定められています。
記載事項は合計9項目あり、1.労働者の氏名、2.生年月日、3.履歴、4.性別、5.住所、6.従事する業務の種類、7.雇入れの年月日、8.退職の年月日及びその事由(解雇の場合はその理由)、9.死亡の年月日及びその原因、という内容です。履歴書は選考時に使用するほか、入社後に「労働者名簿」を作成する際にも使用されることが多く、9つの項目を網羅できる内容となっています。
出典:
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/b.pdf
厚生労働省愛媛労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/20404/2040416.html
履歴書は必ずしも必要なものではない?
「労働者名簿」を作成するための9項目は法律で定められていますが、必ずしも「履歴書」をもとに作成する必要はありません。同じ9項目の情報を正しく得ることができるなら、形式に決まりはないのです。実際に「履歴書不要」という条件で、求人を募集する企業も多く存在します。
応募時に履歴書を求めない企業では、求人ページで独自のフォーマットを準備して応募者に入力してもらう、面接時に書類への記入を求める、といった履歴書以外の方法で必要な情報を得ている場合が多いでしょう。応募者それぞれで形式が異なる履歴書に比べて、全員を統一したフォーマットや書類で管理できるため、企業にとっても効率的な方法です。
そのため、履歴書不要の企業に応募する場合でも、面接時に履歴の記入を求められる可能性があります。突然学歴や職歴の年月を求められてもスムーズに記入できるよう、念のために履歴書は持参したほうが安心といえるでしょう。応募先には見せない履歴書ですから、下書き状態やメモ書きでも問題ありません。
職務経歴書との違い
転職時、応募先の企業に「履歴書」と一緒に提出することの多い書類に、「職務経歴書」があります。2種類の書類、それぞれの役割はどう違うのでしょうか。
「履歴書」は、本人の基本情報、志望動機や希望条件を確認する書類であるため、「応募者がどんな人か」、「雇用したあと、人柄や希望条件が自社にマッチするか」を判断することが可能です。それに対して「職務経歴書」では、これまでの職歴について、担ってきた業務や、果たしてきた業績まで詳細に記載します。
職務経歴書は、「応募者の仕事上のスキル」、「雇用した後、自社で行う仕事に必要な能力を持っているか」を判断することができる書類、という違いがあるのです。
応募者側から2つの書類の違いを考えると、人柄や希望をアピールしたい場合は「履歴書」に、スキルや実績を評価してほしい内容は「職務経歴書」に記載する、といった使い分けをすると良いでしょう。
履歴書を作成する際、書き方のポイントは?
履歴書は「人柄や希望をアピールできる書類」といえますが、採用する企業側は、多人数の書類を一度に取り扱います。履歴書は、どの応募者も似たフォーマットを利用するため、実は各応募者の違いを見つけやすい書類です。
企業は履歴書から何を読み取っている?
多くの履歴書を見ている企業側は、どのようなポイントで判断するのでしょうか。たとえば、「基本的なビジネスマナーを理解しているか」、「業務のルールを守り丁寧に仕事ができそうか」といった点は、「履歴書の書き方見本のルールを守っているか」、「丁寧に書かれているか」で判断できます。
字が下手でも、丁寧に記入するようにしましょう。雑に書いたり、書き間違いを修正せずに提出したりするよりは、パソコンで作成した書類のほうが好印象です。
パソコンで作成する場合は、作成ソフトをどの程度使えるかというスキルも見られていると考えて、書式を整える、フォントを揃えるなど、見た目の統一感まで気を配ります。印刷後に、表の崩れや改行のズレがないかどうかもチェックしましょう。
そのほか、学歴や職歴に一貫性があるか、転職回数は多すぎないか、業務に活かせる免許・資格を持っているか、希望条件が募集内容と合っているか、通勤は難しくない距離か、入社への熱意を感じるか、なども履歴書の評価ポイントです。
細かなポイントにも気を配って、他の応募者と差をつけよう
似た書類を数多く見比べると、かえって細かなポイントが目につくものです。履歴書を作成するときには、「年月の表記は和暦・西暦を統一する」、「手書き履歴書での書き間違いは、二重線で修正するよりも潔く書き直す」、「最後に誤字・脱字がないかどうか(パソコン作成の場合は誤変換がないかどうか)チェックする」といった点まで気を配りましょう。
1人の書類を評価・判断する時間が短いため、「転職回数が多いときの職歴は、スッキリ見えるように簡潔に記載」、「志望動機などの文章では、無駄な文を省いて必要な情報をわかりやすくまとめる」ことも大切です。
履歴書作成の注意点
履歴書は、選考時に身元証明の代わりともなる、重要な書類です。悪気のない抜けもれや記入時の勘違いであっても、経歴詐称と判断されてしまうと、選考時に不利になる場合があります。履歴書の内容に沿って採用されたあとで、事実と違うとわかった場合には、入社後にトラブルになってしまうことも考えられます。
偽りのない正確な記載をするために、学歴・職歴・免許取得の年月や、学校名・会社名・資格名称などは、記入時に再確認するよう心がけましょう。
転職エージェント&採用担当の両方の視点から
記事監修をお願いしているジャパンナヴィゲイトの森田氏は、転職エージェン=推薦する立場と採用担当=応募を受け付ける立場の両方の視点から「きちんとしているか」かどうかが大事なポイントだと言います。
“きちんと”とは「誤字脱字がない」「年月日などの数字の抜け漏れがない」「読みやすく書かれている」など。
職務経歴書は事実に基づき経歴をPRするための書類。履歴書は入社した方も入社に至らなかった方も、会社としては一定期間保存をしておく個人情報の基本的な書類という位置づけです。パッと見て、まずきれいで読みやすく、必要な情報が正確に分かりやすく書いてあると、基本書類としての信頼性が高まります。
どう書けばいいかを考えるとき、”きちんとしているか”に沿っているかどうかで判断するそうです。
詳しくは、森田氏のnote「履歴書の書き方~転職エージェント&採用担当がお伝えする、印象が良くなるポイント~」をご確認ください。
履歴書は企業の求めるポイントを押さえて作成しよう
転職活動で応募先企業から求められることの多い履歴書について、なぜ必要なのか、職務経歴書との違いや、作成のポイントをお伝えしました。
採用側企業にとって履歴書は、似たフォーマットで多くの応募者を比較する書類です。ビジネスマナーの有無や、人柄が社風に合っているかなど、多くの情報を履歴書から判断しています。
企業が得たいと思っている情報を、履歴書に的確にまとめることができれば、転職活動も有利に進められるでしょう。ぜひ、ご紹介したポイントを押さえて作成してみてください。
参考:
履歴書の書き方~転職エージェント&採用担当がお伝えする、印象が良くなるポイント~(森田秀司のnote)